路地裏の唄
その様子に県や玖科は興味深い様子で傍観を決め込み、現樂は興味なさそうに息をついて書類をパラパラとめくり始め、苣は相変わらずの仏頂面で様子を眺め、律とコンツは目を丸くして話を聞いている。

「あ、クトーとアクセンは元はうちのんみたいな武器型やってんでっそれをシャチョーが…」

「桧奈、今機関じゃストールズにいるツールはどれだけ把握してる?」



深梁を遮って現樂が桧奈に声をかけると、桧奈は長い睫をしばたたかせ記憶を探るように人差し指を顎にあてて視線を中空にさまよわせた。



「レッドクラスはそこのラビットとロップイヤー。それからシェルフィッシュにパンサーくらいね」

「苣、コンツ。それ以外にレッドクラスはいるのか?」

「レッドクラスって?」

「私達白髪赤眼のツールの事ですわ我が君。ツールには完成個体のレッドクラスと判断機能が元より欠陥状態にあるブルークラスとございますの」

「俺が知る限りはあと二人だ」

「私もそれ以上は知りません」



聞けばツールはメーカーが勝手に増やし、不要になれば処理される。その増減について既存のツール達に情報が完璧に与えられるわけではないらしい。
ただ任務の中で共に行動をしたことのある者の顔くらいは知っている、といった程度なのだそうだ。


二人が把握していたあとの二人は『キラーホエール』(シャチ)と『デア』(鹿)。

わかる範囲ではシャチが一番古く、鹿が一番日が浅いのだと言う話だった。


「あとは…お前ら二人は"黒姫(クロヒメ)"についてなんか知らねぇか?」

「柚茶(ユタ)の事か」

「型以外の名があるの?」


現樂の質問にそう口を開いた苣に桧奈が目を向けた。


「名も何も奴は俺達とは完全に成り立ちが違う。以前昔はヒト同然に扱われていたというような話を聞いた」

「成り立ちが違うか…」

「黒姫の特徴から考えてみればなんかわかるような気もするわね」


見れば原十郎も珍しく表情を僅かに曇らせている。
なんとなく上司二人と彼には聞き辛く律は県に声をかけた。
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