路地裏の唄
バチッ
静電気のような微かな音と共に、律に手を伸ばそうとしていた原十郎の腕がなくなった。
何が起こったのかわからない律の前で、驚きに目を見開くもいち早く状況を察した原十郎が再びメモリにロックを掛け直しながらまだ無事な方の腕で律を抱えて走り出す。
「……ったく、間が悪いのぉ」
走りながらそう呟いた原十郎の言葉に律が後ろを見ると、小さな子供程はある鼠のような獣が追って来ていた。
「!
分子…!」
「傷があるようじゃが…
逃げ切れんな」
「えっ?」
原十郎をみるとその頬に亀裂が入っている。
身体機能を動かす核に攻撃をされた証拠だった。
「律、俺がお前さんをおろしたらすぐに明かりの強いところに逃げるんだ」
「そんな、原十郎…」
「振り向くなよ」
急速に壊れつつある身体のままいつものように笑うと原十郎は律をおろし迫るアンインストール分子へと対峙した。
「原十郎!」