王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 つらいのはいつも町田や王女さんが見つける誰かで、おれじゃない。
 ――というより――
 虎が階段を上がる気配をぼんやりと感じながら、ずっと心の底で考えていたことが、突然頭いっぱいに広がった。

 虎を助けるために、不感症のおれに見切りをつけた王女さんが動いてくれたのか?
 見える町田を探してくれたのか?

 ――ありえる――

「かんべんしろよ」
 それに気づいて恩返しもしない男に、おれはなれない。
 だからって!
 恩返しの仕方くらい、こっちに選ばせろよ、王女さん。
 見ず知らずの30オバサンに「なんか悩んでるなら聞きますよ」とか突然聞けないし。
 ましてや、そのあげく「あんたが死にたいほどの絶望を抱えてるって、言うやつがいるんですが」まで事が進んだらどうせよと?

 おれは町田を楽にしてやりたいが、巻きこみたくはない。
 町田には王女さんが大切なんだろうが、おれはどうでもいい。
 ほーら。
 ボランティアなんてしてやる必要はない。

 では。
 必要なのはなんでしょう。
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