王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
「おれの心配より自分の心配をしてください、加藤さん」
 町田がふぅ…と大きく息をつく。
「ごめん」
 町田がいつになくシリアスな理由はおれだってもうわかる。
 暑さのせいではない汗が町田の額に浮いているのも気づいていた。
 町田はずっと自分のことは後回しにしているけども。
 町田を助ける王女さんはもう、いないのだ。


 虎がおれのために線路下の百均ショップにシャワーサンダルを買いに行ったあと、駅のロータリーのベンチにおれを座らせた町田は「すみません」と言って黄色いレンズのグラスをかけた。
 夏のおしゃれ男子としては必要充分な装備だが、町田がそれを必要とする理由は違う。
「やべぇのか」
「さすがに王女さま抜きで、このひとごみは。すみません。加藤さんには不愉快な表情になってしまうと思うので――隠します」
「いや、謝るのはおれだわ。すまん。(いて)ぇで頭っぱいになったらもう、おまえしか思い浮かばなくて」
「――うれしかったですよ」
「…………」
 ありえん。
 …と決めつけたろうな、おまえと知り合う前のおれなら。
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