王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。

 * * *

「ああ、くそ。イライラするっ」
 ケガ人生活も5日。
 少しは慣れるかと思いきや日々つのる不便。
 虎が買ってくれた3本ラインのパチモンシャワーサンダルに右足を突っこんで、おしとやかに登下校しているのに神経が磨り減ること大根おろしのごとくなり。
 誰かにまた踏まれる恐怖で、ここは爪先が鉄板の安全靴でも履きたいところだけど、もちろんそんなものは持ってないし。
 バディーテーピングで薬指とともに固定された小指がかさばってローファーは履けないし。
 病院貸与の杖をついて、いかにもケガをしてます的外見で同情されれば危険もないか。なんて。
 おれの人生はそんなに楽観できないらしかった。


「世の中、ただまっすぐ歩くのが、なんだってこんなに大変なんだ!」
 コンビニの駐車場に座りこんでゲームをしている小学生の自転車はドミノ倒しで襲ってくるし。
 けつまずいたばあちゃんは、おれの胸に頭突きをくらわしてくるし。
 バカ犬は飼い主を引きずって足の匂いを嗅ぎにくるし。
 植えこみから飛び出してきておれを驚かしたクソ猫は、わざわざもどってきてサンダルの足に猫パンチ。
 自分も驚いたことへの仕返しだろうが、八つ当たりも甚だしい。
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