王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 そのうえで、テーピングで足が蒸れて、白癬菌に全身を侵食されて死ぬ男の姿を想像してみろや、とか。
 今頃になって思いついた捨てゼリフをかましてやれば、妄想癖のある女には最高の仕返しだったのになぁ。
「いっ、てぇぇぇ」
 足を気にしてうつむいて進めば、総受熱量を減らすために植えられた路傍の夾竹桃の下枝が頭に刺さるし。
「あだーだーだー」
 腹を立てて見上げて歩けば、目の不自由なかたのための誘導ブロックが完全なトラップ。
 薄いビニールサンダルがボチボチの健康サンダルに大変身。
「はぁぁぁぁ。だめだ。休憩」

 音を上げていつもの公園へと進路を変えたとたん感じた爽快感。
「あら順調」
 森林浴効果というのは本当にあるのかもしれない。などと。
 日陰でも焼けついて、降ろした尻にじわりと熱気を伝えてきた石のベンチでひと休み。
 そもそも見えない、感じないおれに、王女さんはなにを期待していたのか。
 別れる決意を固めてから、初めて相手のことを真剣に考えるような男だぞ、おれは。
< 30 / 66 >

この作品をシェア

pagetop