王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 人間にもらったと覚えないように、千切ったバンズをベンチの下に置いて。
 残骸の始末は製造者にしてもらうべく進軍開始。
 昨今、ゴミ捨ては本当にめんどくさい。
 たとえ地面に落ちたものだって、匂いだけはうまそうだし。
 おれだって昼飯は食いたいし。
 あれもこれもそれも、ついでだ、ついで。

「あー、くそ」
 どうした援軍。出てこい援軍。
 店までの道をカックンカックン、杖をついて進みながら、念力を送るのに虎も町田も現れない。
 あたりまえだ。
 念力なんて、ミジンコほども信じてないのに使えるわけがない。
 町田には店に近づくなと言ってあるし。
 虎が来るのは女が退勤するという午後4時だ。
 しみじみ人生ってやつを考えながら店の自動ドアを開いたときには、節電エアコンの風ごときじゃ治まらないほどの大汗をかいていた。


「お待たせいたしました。次のお客様、ご注文が決ま――…」
 カウンターの女がおれに気づいて絶句。
 さすがに客商売、ひとの顔をおぼえるのは得意らしい。
 先客のうしろにズリズリ足を引きずって並んだおれを、ちらちら見るけどその手はしっかり客に紙袋を渡している。
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