王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 ブラボー。
 そのひとたらしの技、おれにも教えてくれ。
「加藤さーん。名前、決まりました?」
 振り返る町田に中指を立てかけてひらめく。
 ――ああ――
 おれってホント、いやがらせの天才。
「マオとヒトミでどうですか、平泉さん」
「まおちゃんと、ひとみちゃん?」振り返った平泉さんがほほえんだ。
「それって、加藤くんのカノジョの名前?」
 町田も振り返った。
 ただし、唇をとがらせて。
「加藤さん、両方メスだって言ったでしょ」
 言われたなぁ。
「気に入りませんか? どっちもスゲェかわいい子です」
「加藤さん!」
「わかった。ありがと。それにしましょう。――じゃ、こっちの虎ジマの子がまおちゃんで。こっちのおめめクリクリの子がひとみちゃん。…て。やだ、ぴったり」
 それにはおれも腹を抱えて大笑い。


 バスに乗りこんだ平泉さんに手を振って、ズリズリと駅の改札に向かうおれのうしろを町田が黙ってついてくる。
 手にはおれの杖と白いビニール袋。
 つまりは荷物係。
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