王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
「なぁ……。もしかして、王女さんがこだわってたの…、あのひとじゃなくてココか」
「そうだったみたいです」
 おれの気分がわかる町田は、きちんと真面目に返事をしてくれた。
「平泉さんが強くなって――。ココは…ラクになったのか?」
 町田が目を見開いて。
 そのままふわんとおれにもたれてくる。
「おれはケガ人だ」
「すみません。入ってたんで――酔いました」
「もう! わけわからんこと、言ってろよ」



 改札で初めておれは気づいた。
 町田は定期じゃない。
「あ、すみません。気づいちゃいましたね。おれのアパート、学校の裏なんですよ。でも最初のとき、真央ちゃんの観察したくて、いっしょに電車…乗っちゃったでしょ。あれでおれ……、そっか、加藤さんといると電車にも乗れるんだ、今まで恐ろしくてできなかったこと、いろいろできるんだぁ、と思って。でも正直、帰りはかなり悲惨でした。今日は大丈夫です。武装してるんで、送っていきます」
 肩の上のヘッドフォンを揺すった町田の手には、相変わらずおれの持ち物の入った白いビニール袋と杖。
 はぁ……。
 確かに。
 たかが足の小指一本でも、ケガをしていると両手は空いているほうが安心だけど。
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