王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
「送るって――。おれは女じゃねえし」
「でもケガ人です」
 ごもっとも。
 だからって、恐ろしい思いをしてまでおれに気をつかうことはない。
 おれはおまえの気持ちなんて、まったくわかってやれないのに。
 それきり黙ってホームまでズリズリ。
 朝はエレベーターの世話になったのに、帰りは階段を自力で上れている。
 王女さまのご加護は甚大だ。


 ホームの電光掲示板で待ち時間を確認。
 町田は黙っておれの足元を見ている。
「もう平気だから! 痛くもねえし」
「ああ…」まつ毛を(しばたた)いた町田が、こくっとうなづいた。
「そうですね。加藤さんはこれからが大変なんですもんね。王女さまの世界の人助けまで――。おれ、なんにもお手伝いできませんけど。困ったらおれのことも思い出してくださいね」
「…………」
 なるほど。
 よーく、わかりました。
 これが終着点ね。
 お人好しの町田は王女さんの執事。
 でも王女さん、おれはいやだからな。
 あんたのひまつぶしにつきあうのは。
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