王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
第5話『わ・eye』夜の、子猫たち。
 町田が見たがった世界遺産紹介の番組をリビングのテレビで見終わって。
 虎が夕飯の支度をするおふくろを手伝いにキッチンに立ったあと、ふと気づいた町田の視線。
 見てるなぁ、おれの足を。
 というか足元を。
 見てるほうが恥ずかしくなるくらい、へにゃっとした顔で。
 なんかもう、むずむずすんのよ、最近さ。

「なぁ町田」
「はい」
 返事は聞いたので立ち上がってきょろきょろ。
 ずさんなおふくろがあちこちに置くので探す羽目になる目当てのものは、今日はテーブルの上の新聞の間にはさまっていた。
 なにをしているのかと、おれの挙動を追いかけてきていた町田の目が(しばたた)く。
「ん? ちと準備」
「…………」
 ますますわからないという顔をする町田の前に、今どきアナログなメモ派のおふくろの愛用品をセット。
 準備完了。
「なぁ。おまえって、王女さんが見えるんだよな?」
「はい。今もそこで」てのひらで礼儀正しく示すおれの足元。
「たぶん…ココくんと、遊んでらっしゃいますよ」
「ココは未だに見えねえの?」
「気配は感じるんですが」
 そのへんがよくわかんねえのよな。
 まぁいいや。
「で。王女さんてどんな?」
「――は?」
 いきなり本題。
 時候の挨拶もない手紙は学がないだの品がないだの言われるんだろうが、会話は直球でよろしかろ?
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