王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
「だからさ。王女さんてどんな? ちと書いてくれよ」
「――――――は?」
「おれも知っときたいのよ。いわば同居してるようなもんなんだし」
「ぃや、おれ、絵は全然――…」
「全然っつったって! 目の前にいるんだから模写だろうが。できんだろ、そのくらい」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「加藤さん」
 はい。
「ちょっとここに、おれを描いてみてくれますか」
「おまえを? なんでよ」
「いいからっ」
 いつになくキツイ言いかたに面食らいつつ、上端に〔かとうあり〕と書かれたチビた鉛筆を手に取って町田を観察。
 うむ。

 輪郭、たまご。
 耳、髪に隠れて見えねえじゃん。チャラ男だな。
 眉、よくわかんね。全部見えねぇもん。
 目、でかい。
 鼻、ちっせえ。
 口、ひん曲がって――…

「てめ。なに笑ってるよ」
「だって、加藤さん。それ…、失礼以外にどう言え…と?」
 町田はもう顔面を両手で覆って肩を震わせている。
「あれ? 兄ちゃん、なにやってるの?」
 背中からひょいとおれの手元をのぞきこんできたのは虎だ。
「ぶははははははは」
 とたんに耳元で響いたバカ笑い。
 なんだよ。
「そっくりだろが」
「心外です」「そだね」
 同時に言って。
 笑いこけている虎に町田が見せた顔。
< 61 / 66 >

この作品をシェア

pagetop