パラダイス、虹を見て。
 空が白み始めようとした頃。
 ようやくイナズマさんは部屋から出て行った。
 眠ったふりをしたけど。
 イナズマさんは全然、出て行ってくれなかった。
 私は一睡も出来ず。
 イナズマさんがいなくなった途端、緊張の糸がほぐれたのか。
 すぐに眠ってしまった。

 目を覚ますと。
 頭がすっきりと冴えていて。
 しっかりと物事を考えられる脳に戻った。
 が、それは自分を不安にさせるだけだった。
「この状況・・・」
 ヒョウさんという存在が、よくわからなかった。
 妹…と言ったけど。
 あの正妻の…兄や姉とだって血は繋がっているということだよね?
 じゃあ何故、ヒョウさんは私を助けてくれたのだろう。

 まさか・・・
 実はヒョウさんは父と繋がっていて。
 三回目の結婚を企てているのではないか。
 そう思いついた。

「頭痛い」
 私は立ち上がると。
 自分がネグリジェを着ていることに気づく。
 着替えねばと思うと。
 部屋の隅に4~5着ほどのシンプルなドレスがハンガーにかけられているのに気づいた。
(着ても大丈夫かな)
 近寄って服の丈を合わせてみると自分に合いそうだったので。
 とりあえず着てみることにした。

 昨日、イナズマさんが言っていた、この屋敷には侍女どころか女がいないって言っていたのは本当なのだろうか?
 でも、考えてみれば誰も私の部屋を訪ねてこない。
 今までは服を着るのも脱ぐのだって侍女の人達に手伝ってもらっていたけど。
 自分で着なきゃ駄目かと試行錯誤しながらドレスを着た。
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