パラダイス、虹を見て。
 馬車は私とイナズマさんの2人きり。
 出来ることならば早くこの空間から抜け出したいという思いでいっぱいだ。
 下を向いて何か考え込んでいるイナズマさんを見て、さっさと何か言わんかいと心の中で…悪魔でも心の中で突っ込む。

「おまえ、この先も兄貴と暮らす気はあるのか?」
「へ?」

 溜めに溜めた一言があまりにも意外な言葉だったので、
 自分の口からはマヌケな声が出た。
「おまえがこれからも今の状況でいいって言うならばこの話は無かったことにすればいい。だが、もし今の生活がどうしても嫌で他で暮らしたいって言うのならば、協力してやってもいい」
「…え」
「一週間経ったら、もう一度同じ質問をする。それまでに考えておけ」
 イナズマさんは運転手のほうへ向かって「出してくれ」と言った。

 頭の中で「は?」という状態で停止している。
 何でこう…一気に色んな情報を与えてくるのだろう。
 私はヒョウさんと違って頭が悪い。
 一つ一つを処理するのにどれだけ時間がかかるかわかっているのだろうか。

 目の前に座っているイナズマさんは目を閉じている。
 一体、私はどう言えばいいのだろうか。
「どうして、イナズマさんがそんなことを言うのですか?」
 目を閉じているにも関わらず質問すると、
「そんなの、兄貴の為だ」
 と即答された。
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