パラダイス、虹を見て。
 馬車が到着したのは。
 一週間前に来た劇場だった。
「舞台が見終わってから、話は聴くから」
 とだけ、言われた。
 何で、イナズマさんと2人で舞台を見なきゃいけないんだろうと思うと。
 緊張で吐き気に襲われる。
 案内された席は2階席で、当然のようにイナズマさんと隣同士で座る。
 何で、隣に座っているのがイナズマさんなのだろう…
 例えば、ヒサメさんだったらどうだろうか?
 想像してみると、それはそれで緊張して集中できないだろうなと思って落ち込んだ。
 いやいや。
 昨日から、どうしてヒサメさんのことばっかり考えているんだろう。

 イナズマさんにバレないようにため息をついているうちに。
 ブザーが鳴って、舞台の幕が開いた。


 舞台のストーリーは。
 ある大富豪が自分の跡取りを誰にするか決めるという物語だった。
 子供のいない大富豪は親戚から候補である若者5人を集める。
 大富豪は、候補である5人に様々な試練や課題を与える…といった内容。
 この舞台を手がけているのが、ユキさん、ヒョウさん。そしてヒサメさんだなんて不思議な感じがする。

 場内は満席で、ほぼ貴族であろう観客が煌びやかに着飾って舞台を眺めている。
 年齢層はどっちかといえば高めなのだろうか?
 今更になって、知り合いがいたらどうしようと思って観客を観察するのをやめた。
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