パラダイス、虹を見て。
「ヒョウさんは多分、優しいから言わないと思うんですけど。私はヒョウさんに迷惑しかかけてないので…」
 獲物を捕らえるような目で、ひたすら見つめてくるイナズマさんに。
 早く帰らせてくれーと心で絶叫する。
 あまりにも怖いので、黙り込むと。
 イナズマさんは頭をかいた。
「兄貴の妹だな、おまえ」
「どういう意味です?」
 よくわからない発言に首を傾げると。
 イナズマさんは、深いため息をついた。
「俺が言えるのは、カスミがいなかったら兄貴は死んでいた」
「へ?」
 出会って初めて名前で呼ばれたことに、驚くと共に。
 今、何て言ったのだろう。
「俺は、兄貴とは親しくさせてもらっているし、弟のように可愛がってはもらっているが。本当の弟になることは出来ない。結局は他人だ」
「イナズマさん…?」
「俺は、兄貴のために何でもしてやりたいが。本当の兄弟になることだけは出来ない」
「へ?」
 イナズマさんが急に熱く語りだすので。
 若干、ドン引きする。
「兄貴の痛みがわかるのは、カスミだけなんだよ」
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