パラダイス、虹を見て。
 目が覚めると、随分と日が昇っていたので「あれ?」と思いテーブルに置いてある置時計を眺めると11時を過ぎている。
 ギャーと悲鳴をあげて急いで着替えて畑に向かうと、アラレさんが一人で畑を耕している。
「ごめんなさい、アラレさん。寝坊しました」
 悲鳴に近い声で叫ぶと、アラレさんはニッコリと笑う。
 そういや、アラレさんって普段あまり怒らないよなあ…って今はそんなことを考えている暇はない。

「モヤから聞いたよ。昨日、遅かったんでしょう? ゆっくり休んでいてよかったのに」
「いえ、休んでいたら余計に疲れるので…」
「ふふっ。言っていることがヒョウと同じだねえ」
 それはそれは美しい笑顔で言われたものだから。
 ギャーと顔が熱くなるのを感じる。

 身体を動かすことで、余計なことを考えないで済む。
 とはいえ、今までの出来事がグルグルと脳内を支配していく。
 色んなことにショックを受けすぎて。
 ある場面が切り取られては、いきなり頭で再生される。
「いやいやいや…」と独り言を言いながら、鍬を持っている自分…

 考えたくない。
 とにかく、今はやるべきことをやるだけ。
 そう。
 頭痛くなっちゃうんだから。

 今までそうやって生きてきた。
 考え出したら、きっとおかしくなる・・・
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