パラダイス、虹を見て。
 歓迎されてないんだ。
 ヒサメさんの一言に、傷ついた。

 すべての人に愛されたいとは思っていないけど。
 さんざん、色んな人に嫌われてきた人生の中で。
 あれだけ、はっきりと。
 自分の目の前で言われると傷つくなと思った。

 ベッドの上で何度目かのため息をつくと。
 ドアがトントンッとノックされて「はあい」と返事をする。

 入ってきたのは、まさかのヒサメさんだった。
 もう、あとは寝るだけだというのに。
 何故このタイミングで入ってくるのか。
 シャワーを浴びて。
 化粧も落としてしまっている。
 顔にはまだ傷が残っているので、とっさに顔をそむけてしまう。

「どうされたんですか?」
「…ヒョウから命令されてるからね」
 よいしょっと、部屋の隅に置いてあった椅子を運び出して。
 ベッドの側に置いたかと思えば、
 その椅子にドサッと音をたててヒサメさんが座った。
(嫌な予感しかしないっ!)
 とっさに、すっぴんだということすら忘れ、
 ヒサメさんの顔を思いっきり見た。
「今夜から、交代で貴女が眠るまで誰かが側にいるから」
「な、なななんで?」
「ヒョウの命令だから」
 一言。
 ヒサメさんは一言で片づけた。
「まあ、付け加えるなら。医者にも言われてるから。貴女はまだ治ってない」
「私、まだ病気が治らないんですか?」
 身体の傷は少しずつ治ってきているはずなのに・・・。

「心の傷」

 また、一言。
 冷たい目でヒサメさんが言った。
 ぼんやりと虚ろで。
 無表情で私に言う。
「・・・・・・」
 何も言い返せなくて。
 黙ってしまう。

「恥ずかしいことじゃないさ。一人が怖いだなんて」

 そう言うヒサメさんが、あまりにも真剣だったので。
 やっぱり何も言えなくなってしまう。
「まあ、イナズマよりかはマシでしょ?」
 急にイナズマさんの話をしたので。
 私は思わず、「ぶっ」と声に出して笑ってしまった。
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