パラダイス、虹を見て。
 豪華なシャンデリア。
 目に入ったのはまずキラキラした人間だった。
 ホールの中で踊る人々。
 端っこで喋る人達。
 見るからに全員、上流階級の人達だってことがわかる。

 ヒョウさんの知り合いって、身分の高い人なんだろうな…と思いながら。
 ぼーと立っているわけにもいかず。
 ささっと端っこへ移動して。
 料理が並ぶ前に立つ。
 ダンスはヒョウさんが来てから、テキトーに踊ればいい。
 とりあえず、ヒョウさんが来るまでどうにか繋ごう。

 ボーイから何のお酒なのかはわからないケド、
 グラスを受け取る。
 料理を眺めながら、どれを食べようかなーと物色する。

 軽やかな音楽が流れている。
 どうしてそんな楽しそうに踊れるのだろうか?

 生演奏が遠くに響く。
 過去の思い出が、じわりと頭をよぎる。

 平和に生きているはずなのに。
 一人になった瞬間、闇に飲まれる。
 その闇があまりにもドロドロとしていて。
 自分が一体、どこに立っているのかわからなくなった。

「お嬢さん、良かったら踊りませんか?」

 最初は、まさか自分に言われているのとは思わずスルーしてしまった。
「お嬢さん」
 もう一度、はっきりと言われて。
 私は声の主のほうを見た。
 仮面を見に着けているけれど年上の男性だっていうのはわかった。
 見るからに紳士。
 40代くらいだろうか。
 物腰のやわらかい優しそうな男性が立っている。
「あ・・・」
 と声が出て、
「ごめんなさい。一緒に踊る人がいるので・・・」
 と言ってその場から急いで逃げるように走り去る。
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