パラダイス、虹を見て。
「18歳で初めて嫁いだ侯爵家の夫は30歳も年が離れていて、相手にもしてもらえなくて。20歳で嫁いだ侯爵家の夫は年は近かったけど、酷く乱暴な人で…子供も出来なくて…だから、私は・・・ゴミです」
 子供が産めないら、おまえはゴミだ。
 何度、言われたことだろうか。

「…ゴミっていうのは、周りが言ったの?」
 哀しそうに、低い声でヒョウさんが言う。
「・・・・・・」
 私が黙り込むと。
 ヒョウさんは私の手を取ってぎゅっと握った。

「助けてやれなくて、すまない」
「……」
 あたたかい手だった。
 瞼が重たくなって、それ以上話すのは無理だった。
 とにかく、今は寝なきゃ。
「ごめんなさい」とだけ言うと。
 私は深い眠りについてしまった。
< 5 / 130 >

この作品をシェア

pagetop