パラダイス、虹を見て。
7.気になるあの人
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あの夜から。
少しだけ、サクラが心を開いた気がする。
…と言っても、
時折、部屋に引き籠っているけど。
「ヒカリ、随分とサクラと仲良くなったなあ」
いきなり、モヤさんが話しかけてくるので。
私は「きゃあ」と悲鳴をあげてしまった。
夕方、庭園のベンチで。
ぼーと花を眺めていたときのことだ。
夕方から夜にかけての時間が好きで。
仕事を終えて一人、ベンチで座るようになった。
サクラは部屋で休むと言ってた。アラレさんはヒョウさんとデートに行くと言って、はしゃいでたっけ。
モヤさんは隣に座る。
「帰ってきてたんですか?」
うっすらと髭の生えたモヤさんを見るのは、一ヵ月ぶりだった。
モヤさんは、一ヵ月ほど国中を旅して。ここに戻ってきては絵を描いたり彫刻をしているそうな。
「昼ぐらいに戻ってきて。皆を観察してた」
にんまりと笑うモヤさんに。
しばし、あきれ返る。
この人は人間観察が好きなのか。
帰ってきても、どこかに隠れて皆を観察する癖があるようだ。
「サクラが元気になってよかったー」
「…特別な子なんですね」
素性は未だわからないけど、サクラは皆に大切にされている子なのだと思った。
モヤさんが黙って前を見るので。
私も黙った。
モヤさんの側にいるのは、本当に心地良い。
風が吹いて。草木が揺れて。
夜がやってくる。
この切ない感覚の中。
モヤさんといると不思議と心強い気持ちになる。
「…あの、モヤさん」
「なんだい、ヒカリ」
ふふふと笑うモヤさん。
「あの…、ヒサメさんの姿をずっと見ていないんですけど。お仕事か何かですか?」
心臓をドキドキさせながら言った。
仮面舞踏会で抱きしめられてから。
直接、ヒサメさんとは会話していない。
夕食時にヒサメさんを含め、皆で食事することはあったけど。
そのうち、ヒサメさんを食堂で見かけることもなくなってしまった。
考えてみると。
アラレさん以外は、あんまり屋敷にいない気がする。
夜になるとユキさんは部屋に顔を出してくれるけど。
ヒョウさんは常にいないのが当たり前。
「ヒサメ? あいつが居ないってことはないと思うけど…。何かあいつに用なの?」
「えっ…」
モヤさんの質問に。
どう返していいのかわからない。
「いや…、用ってほどじゃないんですけど」
声が小さくなるのを感じた。
「あいつ、夜しか現れないからねえ。ヒカリが会いたがってたって声かけておくよ」
「えっ!? いや、大丈夫ですって」
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あの夜から。
少しだけ、サクラが心を開いた気がする。
…と言っても、
時折、部屋に引き籠っているけど。
「ヒカリ、随分とサクラと仲良くなったなあ」
いきなり、モヤさんが話しかけてくるので。
私は「きゃあ」と悲鳴をあげてしまった。
夕方、庭園のベンチで。
ぼーと花を眺めていたときのことだ。
夕方から夜にかけての時間が好きで。
仕事を終えて一人、ベンチで座るようになった。
サクラは部屋で休むと言ってた。アラレさんはヒョウさんとデートに行くと言って、はしゃいでたっけ。
モヤさんは隣に座る。
「帰ってきてたんですか?」
うっすらと髭の生えたモヤさんを見るのは、一ヵ月ぶりだった。
モヤさんは、一ヵ月ほど国中を旅して。ここに戻ってきては絵を描いたり彫刻をしているそうな。
「昼ぐらいに戻ってきて。皆を観察してた」
にんまりと笑うモヤさんに。
しばし、あきれ返る。
この人は人間観察が好きなのか。
帰ってきても、どこかに隠れて皆を観察する癖があるようだ。
「サクラが元気になってよかったー」
「…特別な子なんですね」
素性は未だわからないけど、サクラは皆に大切にされている子なのだと思った。
モヤさんが黙って前を見るので。
私も黙った。
モヤさんの側にいるのは、本当に心地良い。
風が吹いて。草木が揺れて。
夜がやってくる。
この切ない感覚の中。
モヤさんといると不思議と心強い気持ちになる。
「…あの、モヤさん」
「なんだい、ヒカリ」
ふふふと笑うモヤさん。
「あの…、ヒサメさんの姿をずっと見ていないんですけど。お仕事か何かですか?」
心臓をドキドキさせながら言った。
仮面舞踏会で抱きしめられてから。
直接、ヒサメさんとは会話していない。
夕食時にヒサメさんを含め、皆で食事することはあったけど。
そのうち、ヒサメさんを食堂で見かけることもなくなってしまった。
考えてみると。
アラレさん以外は、あんまり屋敷にいない気がする。
夜になるとユキさんは部屋に顔を出してくれるけど。
ヒョウさんは常にいないのが当たり前。
「ヒサメ? あいつが居ないってことはないと思うけど…。何かあいつに用なの?」
「えっ…」
モヤさんの質問に。
どう返していいのかわからない。
「いや…、用ってほどじゃないんですけど」
声が小さくなるのを感じた。
「あいつ、夜しか現れないからねえ。ヒカリが会いたがってたって声かけておくよ」
「えっ!? いや、大丈夫ですって」