パラダイス、虹を見て。
8.こんな時はデートをしよう
 モヤさんという人が、どういう人間なのか。
 未だよくわからない。
 掴みどころがない、何を考えているのかが。
 わからない。
 …ただ、絶対に優しくて。
 癒し系なことは確かだ。
「俺はねー、明日ねえー。ヒカリとデートするんだぞお」
 夕食時。
 ヒサメさん以外の全員が集まった席で。
 自慢げにモヤさんが言った。
 ヒョウさんはニコニコしながら
「そりゃ、良かったー」
 と笑っていて。
「カスミちゃん、モヤに全部奢ってもらいなよー」
 とヒョウさんの隣に座っているアラレさんが満面の笑みで言った。

 …正直。
 反対されるかと思っていた。
 うかつに外出なんて、しちゃいけないと考えていた。
 モヤさんは皆に信用されている人なんだ。

 翌朝。
 屋敷の前でモヤさんと待ち合わせする。
「ちゃんと町娘の格好してきたようだな!」
「…町娘って」
 言葉のチョイスが時折、おっさん臭いのが面白いモヤさんだ。
 町娘の格好でと言われたけど。
 よくわからなかったから。
 サクラと考えて。
 深いグリーン色のワンピースを着た。
 モヤさんは普段と変わらないラフな格好だ。
「じゃあ、行くぞ」
 楽しげに言うモヤさんに。
 てっきり車で行くのかと思っていたら。
 連れてこられた馬小屋に首を傾げる。

「ヒカリは馬、乗れるのか?」
「え、あ、はい。多少は…」
「ま、とりあえず。今日は俺の前に乗れ」
 と言われるがまま。
 ほんとに、言われた通りにモヤさんの前に乗っていた。

「馬が一番楽で速いんだ」
 久しぶりの乗馬でドキドキするよりも。
 後ろにモヤさんが座っていることに緊張してしまう。
 手慣れた手つきで手綱を引くモヤさん。
 周りが颯爽と動いて見える。
 ここへ来てから初めての外出。
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