パラダイス、虹を見て。
 静かだった。
 あまりにも静かな空間で。
 モヤさんは堂々と喋っている。
 まるで、世界には私とモヤさんしかいないのかって錯覚するくらい。
 異様な空間だった。
「ヒサメってイケメンだろ? 魔女が一目惚れしたんだ」
「…それって実話ですか?」
「まあ、黙って聞きなさい」
 真剣な表情になるモヤさん。
 モヤさんの話を止めてはいけないと思い、黙った。
「一目惚れした魔女は、ヒサメと結婚するために。ヒサメの奥さんを殺害。ヒサメは逆上して魔女を殺した」
「……」
「その時、魔女は『あなたがずっとカッコイイ男性でありますように』と言ってヒサメに呪いをかけた」
「……」
 頭がパンクしそうだった。
 ズキンズキンする頭を手でおさえる。
「あいつが夜しか姿を現さないのはね」
 モヤさんは絵を指さす。

「呪いで、年齢を17歳の姿のまま止められたからなんだ」

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