パラダイス、虹を見て。
 頭が痛い。
 早くここから逃げろ。
 頭の中で自分が叫ぶ。
 でも、身体が動かなかった。

「まあ、こんなおとぎ話。信用しろっていうほうが無理かもね」
「……」
 声が出ない。
「ただね、ヒカリ。ヒサメの奥さんがこの世にいないっていうのは事実」
「……」
「人を好きになるのは自由だよ」
 ぽんっって。
 私の肩に手を乗せたかと思えば。
 モヤさんはすたすたと歩いて。
 出口へと向かっている。

 知りたくもなかった。
 絵を睨みつけて。
 モヤさんの元へと走った。

 まるで、
 私がヒサメさんを好きだってことじゃないか。
 ヒサメさんを好きで。
 奥さんがいると知ってショックを受けている。

 …違うから。
 誰かを好きになんて。
 なりたくもない。
 みんな大好きだ。
 ヒサメさんだけ、ほんの少し。
 嫌いになっただけだ。
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