パラダイス、虹を見て。
 この酔っ払いめ…。
 思いっきり睨んでいたのだろうか。
「そんな怖い顔しないで」と言ってヒョウさんは笑う。

「俺はずっと、君に会いたかったし。謝りたかった」
 グラスにワインを注ぐと。
 グラスを持ち上げたかと思えば。
 ヒョウさんはテーブルに置いた。
「血を分けた兄妹なのに、俺は君を幸せに出来なかった」
「…ヒョウさん?」
「俺も独立して、それなりの地位も得た。君を養うだけの財力だってあるんだ。だから、ここで暮らしてほしい」
「・・・・・・」
 そんなことを言われても。
 とっさに声が出なかった。

 考えてもみれば。
 夫に殺されかけて。
 目を覚ませば、いきなり兄だと名乗る人間が現れて。
 一緒に暮らそうだなんて。
 どう考えても、怪しすぎる…

「何が…望みなんですか?」
 じっとヒョウさんを見た。
 やはり、どこか父に似ている感じがした。
 ヒョウさんは「うーん」と言って考え込んだ後。
「家族と暮らしたいんだ」
 ポツリとヒョウさんはつぶやいた。
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