パラダイス、虹を見て。
 ホール前にあるソファーには。
 みんなが集合している。
 アラレさん、ユキさん、ヒサメさん。
 サクラに、イナズマさん。
 先週、旅に出たモヤさんだけ姿がなかった。
「今日の事件について、今後のことを決めようと思う」
 静まり返った空間の中で。
 ヒョウさんが司会進行となって話が始まる。
「犯人はとりあえず、騎士団の牢屋にぶち込みました」
 手をあげて言ったのは、イナズマさんだ。
「彼がどういう経緯でうちにやってきたのか、ちゃんと調べなきゃいけないね」
 腕を組んでヒョウさんが言った。
「俺が、カスミさんに嘘をついたんだ」
 ユキさんは急に立ち上がると。
 私の目の前に立った。
「カスミさん、ごめん」
 勢いよく頭を下げるユキさんに。
 どう声をかければいいのかわからない。
「ユキ。問題はそこじゃないのよ。ここで傷害事件が起きてしまったことが問題なのよ」
 隣にいたヒサメさんが言った。

「ねえ、これってやっぱり。国王に報告しなきゃ駄目なんだよね…」
 アラレさんがビクつきながら言う。
「…ある程度、調べてから報告したほうがいいけど。あの青年は連行しなきゃ駄目だね」
「あ、あの」
 皆に習って手を挙げる。
「マシュウは何も悪くありません。悪いのは、悪いのは…」
 ぐっと唇を噛んだ。
 ヒョウさんを見る。
 自分達の父親が村を壊滅させ、集落の人間を殺した。
 声に出せない。
「カスミが住んでいた村を調べる必要がありそうだね」
 ヒョウさんが言った。
 どこか怒っているようにも感じる。
「あ、あのヒョウさん」
 私は勢いよく立ち上がった。
「私、集落に戻りたいです」
 立ち上がったはずみで、怪我をした足がズキンと痛む。
「集落に戻って、父と母の…家の・・・」
 ボロボロと涙が溢れて。
 再び、座る。
「カスミが行くのは危険だよ」
 ヒョウさんの一言に、駄目かと落ち込む。

「別に、いいんじゃない? 俺がついて行くよ」
 ヒサメさんの言葉に。
 皆は「えっ」と声を漏らした。
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