パラダイス、虹を見て。
「今日はもう遅いから部屋に戻りなさい」と言われたけど。
 私は急に恐ろしくなって首を横に振った。
「そっか、ごめんな」とヒョウさんが謝ると。
「イナズマー、ちょっと来い」
 と言って、イナズマさんを呼び寄せた。

「こちらのレディーを寝室まで送ってさしあげなさい」
 そう言うと。
 ヒョウさんはグラスとワインの瓶を持って立ち上がった。
 イナズマさんの耳元で何か話した後。
「おやすみ」と言ってウインクした。

「へ?」
 残された自分はどうなってしまうのだろうと思っていると。
 ズカズカとイナズマさんが近寄ってきて。
 物凄く怖い顔でこっちを睨んだ。
「兄貴の頼みじゃなきゃ、こんなことしないんだからな。小娘」
「こむすめ!?」
 小娘なんて言われたこともない。
 それ以前に私はもう成人している。

 ヒョウさんがいなくなった途端、険しい顔でイナズマさんが私に接するので。
 イヤァな気持ちになった。
「案内してやるから、ついてこい」
 そう言って、イナズマさんは部屋を出ていく。
 心の中でいきなり殺されたらどうしよう…と脅える。
 シャツ一枚に黒っぽいズボン。腰には短剣を右と左の両方にぶら下げているイナズマさんが酷く怖かった。

 階段を上って。
 部屋に着く。
「ありがとうございました」とお礼を言うと。
 イナズマさんは乱暴にドアを開けて、ズカズカと中へ入った。

 女性の部屋に勝手に入るこの男は一体何なのだ…。
 呆然とイナズマさんを見ていると。
「さっさとベッドに横になれ!」
 命令口調でイナズマさんがベッドを指さした。
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