パラダイス、虹を見て。
 どれだけ泣いていたのだろう。
 実際は、そんなに時間が経っていないのかもしれない。
 ぐちゃぐちゃになった顔を袖で拭くと。
「そろそろ、行こうか」
 と、ヒサメさんの声がした。
 すっかりとヒサメさんの存在を忘れていた。
 ヒサメさんの手には色とりどりの花がある。
「貴女のご両親に」
「…ありがとうございます」
 花を家の前に置いた。
 手を合わせてお祈りをした。

 何もしゃべらないまま、山道を抜けて。
 車に戻ると。
 サクラが何も言わずに抱きしめてくれた。
 車に乗って、車は動き出す。

 何を思えばいいのだろう?
 実の父親を憎めばいいのか。
 自分の存在を呪い続ければいいのか。
 養父母に罪はない。
 私という存在のせいで、集落は消えてしまった。

 車を降りて、わーと叫んで。
 消えてしまいたかった。
 この先どうしていいのかも、わからない。
 何も考えたくない。

「帰り、寄り道していくから」
 ヒサメさんが言うと。
 車は急に右折する。

 考えるのが面倒臭いと思った私は黙っていた。
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