パラダイス、虹を見て。
 庭園に向かうと。
 ユキさんの言う通り。
 ベンチに座ったヒョウさんとアラレさんの姿が見えた。
 ヒョウさんの肩にアラレさんの頭が寄りかかっていて。
 見るからに、いちゃいちゃべたべたしている。

 これは、話かけられないよなあ・・・。
 引き返そうと回れ右すると。
 モヤさんが立っていたので、「ぎゃっ」と声をあげてしまった。

「ヒョウ、帰ってきたぞー」
 モヤさんの一言にヒョウさんとアラレさんは身体を離した。
「おかえり」
「調査は終わったぞ」
 モヤさんはヒョウさんの耳元でコソコソと話した後、
「じゃっ。僕は寝る」
 と言って去っていった。
 ヒョウさんと目があった。
「おかえり、カスミ」
「ただいま」
 一気に静まり返る感じが、嫌な感じだった。
「ごめんなさい、邪魔して。後でまた来ます」
 早く戻ろうと屋敷の方へ向くと。
「あ、カスミちゃん。僕が退散するから、ごゆっくり」
 にこっと笑ってアラレさんが屋敷の方へ走って行ってしまった。

 絶対にタイミング間違えたな。
 ヒョウさん、怒っているよなあ。
「カスミ、座って」
 ヒョウさんは笑顔で隣を指さす。
「ごめんなさい。ほんと邪魔して」
 ベンチに座る。
 いつも正装しているヒョウさんが。
 今は白シャツにサスペンダー付きの黒ズボンというクラシックな服装だ。
「どうだった?」
 どうだったと言われても。

 私は何て言っていいのかわからず。
 曖昧に「はい」とだけ答えた。
「ごめん。辛いに決まってるよな」
 ヒョウさんはため息をついた。
「これから、もっと残酷なことをカスミに伝える」
「ざんこく?」
 冷気に包まれたような気がした。
 実際、夕方だから気温が下がってきているのはわかっている。

 悪寒だったのかもしれない。

「ハワード伯爵、夫人、並びにその子供4人は法に則って、処刑された」
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