パラダイス、虹を見て。
 ピンチのときは、いつだって現れるのが。
 …ヒサメさんだった。
 ヒサメさんは私の前に立った。
 騎士団2人は驚いていたが、
「あんたが噂のヒサメか」
 と言って下品なくらいに大声で笑い出した。
「騎士団の英雄だったあんたが、女に弄ばれて地にまで落ちるとは」
「こんなところまで女連れて遊んでるだなんて、しっかりと国王に報告させてもらいますよ」
 あまりにも馬鹿にされるので。
 腹が立って「違います」と言うと。
 ヒサメさんは私の口を塞いだ。
「国王に寵愛された一人だからって、いい気になるなよ。カスが」
 騎士団の男はヒサメさんの髪の毛を乱暴に引っ張る。
 何でこんなひどいことをするんだろう。

「おーい。僕も国王に愛されちゃってるんだけどね」

 空からモヤさんの声が降ってきたかと思うと。
「うおっ」
 豪速で飛んできた小石が騎士団二人の顔に当たった。
 騎士団二人は顔をおさえる。

「僕だって正義の味方だもん」
 とニヤニヤしながらヒサメさんの前に立つ、モヤさん。

「あなたは、世界最強…」
 騎士団の一人が青ざめていく。
「僕も国王に愛されちゃってるから、君たちのことちゃんと報告しておくねっ」
 嫌味たらしく、モヤさんがウインクすると。
「すいませんでしたー」
 と言って騎士団二人は逃げて行った。

「ちなみに僕、世界で二番目に強いからね」
 なんの説明なのかはわからない。
 モヤさんを見つめていたが、
「ありがとうございます」
 と頭を下げる。
 ヒサメさんは私を見ると。
 おでこをペチンと叩いてきた。
「あのね、辛いのはわかるけど。こういうのは駄目だよ」
 怒った声だった。
「ごめんなさい」
 頭を下げる。

「帰ろ。久しぶりに皆で夕食、食べよっ」
 明るく言うモヤさんに救われる。
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