拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
ーー恭平兄ちゃんのことを好きと言った覚えは全くないけど……。
創さんの言葉を聞く限り、創さんのプライドは、かなり高いのだということが窺えた。
けれど、あいにく今の私にはそんなモノに構っている余裕なんてなかったのだ。
まぁ、それは仕方ないことだと思う。
だって、プライドのお高いらしい創さんからしてみれば、そんな私の様子に、黙ったままでいられる訳がなかった。
しばらくして顔の赤みがおさまったのか、すぐにいつもの調子を取り戻したらしい創さんによって、私は元の状態へと追い込まれ。
余裕なんてすぐに根こそぎ奪われてしまっていたのだ。
そうして元通り、私のことを組み敷いている創さんに見下ろされつつ。
「あんなに嫉妬させられたのは、菜々子が初めてだ。それに、俺のことを好きだと自覚したんだから、もうこれからは一切手加減なんかしてやらない。今すぐ俺のものにしてやる。もう夢だなんて、そんなこと言えないように、もっともっと俺のことを好きにさせてやる」
えらく上からな高圧的な命令口調の割には、表情はどこか苦しげで、見聞きしているだけで胸がギュッと何かに強い力で締め付けられるようで、なんだか切ない心持ちになってくる。
その様子からも、それだけ創さんの気持ちが真剣なんだって伝わってくるようだ。
もう人質だとか、父親のことだとか、そんなものは頭からスッポリと抜け落ちてしまっていて。
えらく上からな高圧的な命令口調とは裏腹な、優しく宥めるようにして、そうっと触れてきた創さんの柔らかな口づけを私は何の躊躇いも抵抗もなく受け入れてしまっていた。