拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
一体、どこから聞かれていたのかとドキドキしまくりの私の元に歩み寄ってきた創さんに、気づけば、いつぞやのように背後から腕に包み込まれてしまっていて。
「////……!? えっ、と、あの」
どう言って説明すればいいのかという焦りと、羞恥のせいで真っ赤になって狼狽えることしかできずに居る私は、
「……で、どこに行くか決まったのか?」
背後から抱き竦めた私の肩に顔を埋めてきた創さんに、耳元でそう尋ねられて、ハッとした。
何故なら、朝からはしゃいでいた理由でもあった、創さんとの”初デート”のことをスッカリ失念してしまっていたからだ。
実は昨日、仕事を終えて帰宅早々、創さんに、父親との対面が一週間後に決まったことと、それまでの一週間休みをもらったから、行きたいところを考えておけ、そう言われて、ずっと考えていたのだが……。
なにせ、今まで色恋に縁もなく、色々妄想しているだけで、胸がいっぱいで、結局決められずにいたのだった。
ーーどうしよう。創さんとの初めての記念すべき初デートなのに、頭が真っ白になって、なんにも思いつかないよ。
「……その様子だと、まだ決められないようだな? まぁ、急なことだったからなぁ。じゃあ、明日からの予定はこれからゆっくり決めるとして。今日は天気もいいし、水族館に行ってみないか?」
たかが初デートにテンパってしまっているところ、創さんからの思わぬ助け船に救われた私は、思いの外大きな声を放ってしまってて。
「はいッ! 水族館、メチャメチャ行きたいですッ!」
「ハハハッ、じゃあ、決まりだな」
「はいッ! すぐに準備しますッ!」
「おい、待て待て。その前に朝食だろ?」
「あっ! そうでしたッ!」
「ハハハッ」
創さんとの初デートに意識がトリップしてしまっている私は、いつにも増してうっかり者の本領を発揮し、創さんに朝から何度も笑い飛ばされてばかりいた。