拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
そんな私のことを今朝と同じように軽く笑い飛ばして鋭いツッコミを入れながらも、創さんもとっても楽しそうにずっと破顔したままだ。
だから余計に私ははしゃいでしまっていたのだった。
お陰で、いい具合に緊張も解れて、いつしか創さんのツッコミにも、ムッとして言い返してみたり、時には顔を見合わせて笑い合ってみたりと、恋人らしいやりとりもできていたように思う。
これまで話したことがなかったことも話したりもした。
「そうですけど、こんなの見るの初めてなんですもんッ!」
「家族と来たことなかったのか?」
「はい。学校が休みの日は店があったんで」
「……あぁ、悪い。そうだよな」
時には、ちょっと踏み込みすぎて躊躇してみたり。
それをフォローし合うように、またお互いのことを話したりして。
「あっ、でも、子供の頃から母や伯母がお菓子作るの身近で見るのが好きだったのもあって、早く自分も作れるようになりたいって思ってたので。出かけたりするよりも、店の手伝いする方が楽しかったんで、全然……って、ちょっと変わってますよね? へへっ」
「否、凄いことだと思う。きっとその頃から菜々子は今みたいに輝いてたんだろうなぁ」
「////……そっ、それはどうか分かんないですけど。創さんの方が輝いてますよ。もう、キラキラしすぎて眩しいくらいですッ!」
「……ん? あぁ、確かに。今日は暑いし、水面に反射するせいか、陽差しが余計に強く感じるのかもなぁ」
「……いや、まぁ、そうなんですけど……」
「暑いし、そろそろ屋内のエリアに行くか?」
「……はい」
意外にも、創さんがちょっと天然なところがあるというのにも、気づくこともできたし。
初日から、緊張でどうなることかと案じていたけれど、すべては杞憂に終わって、文字通り、記念すべき初デートとなった。