拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
その言葉に、うっかり者の私は、思わず顔に手を当てて確認するというおバカっぷりを披露してしまっている。
そんな私のことをやっぱり蕩けるような笑顔を湛えたイケメンフェイスで見つめつつ。
「ハハッ、冗談を真に受けるな。あーあー……。菜々子と居ると本当に楽しくて、時間が経つのもあっという間だなぁ」
軽いツッコミをお見舞いしてから、なにやら感慨深げに独り言ちるように呟くと。
今度は、気持ちを切り替えるようにして、
「さてと、帰ったらさっさと風呂入って寝るぞ」
そう言ってくるなり、
「……あっ、はいッ!」
私の返事を聞き終えないうちに、創さんは、さも何もなかったかのようにスタスタと部屋に向けて歩き出してしまったのだった。
ついさっきまで、あんなにテンパっていたクセに。
ーーなんだ。何もないのか。
創さんの腕の中で揺られながら、私はがっかりしてしまっていたのだった。
そんな私の心の中には……。
やっぱりこれまで色んな女性とそういうことをしてきたのだろう創さんにとったら、私みたいな処女では、物足りなかったんだろうなぁ。
……もう飽きられちゃったのかなぁ。
いやいや、そんなことはないよね。今だって、私と一緒に居たら楽しくてあっという間に時間が過ぎるって言ってくれてたんだもん。
ーー愛梨さんが言ってくれたように、創さんのことを信じないと。
いつしか不安が芽生えていて、でもそれを愛梨さんの言葉のお陰ですぐに打ち消すことのできた私は、気持ちを切り替えることができて。
翌日、昼間は映画館で初めてのカップルシートで創さんとゆっくり寛ぎながら流行の映画を鑑賞して、夜は創さんの提案により、都会の夜景を眺めながら美味しいディナーを堪能するという、なんとも贅沢な、ナイトクルージングを楽しんだ。
その翌日は、ちょっと遠出をすると言うからどこに行くかと思えば、なんとヘリに乗って、都心から富士山の麓までの空中ドライブを楽しみつつ、辿り着いた綺麗な湖の畔にある素敵なコテージでは、しばし都会の喧騒を忘れて、ゆったりのんびりと過ごしたりもした。
夢のような一時を過ごしているうちに、一週間なんてあっという間に過ぎ去っていて、とうとう休日の最終日である夜を迎えてしまっている。