拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
お陰で、創さんが口を開くたびに微かな振動ばかりか、あたたかな体温までが伝わってくる。
そして心臓までもがバクバクと煩いくらいに暴れ出してしまっている。
たったこれだけのことでこんな有様だというのに、よくもまぁ、拍子抜けなんてできたものだ。
身勝手な自分に心底呆れ果てている間にも、創さんの話は続いていて。
自然に、私の意識もそちらへと集中していった。
「まぁ、確かに、菜々子に夢だなんて思われたくなかったし。もう、二度と逢えないって思っていたからなぁ。言われたとおり、さんざんエッチなことをしたって自覚もある」
「////……ッ!?」
そうして創さんの口から飛び出してきた、あの夜のことを彷彿とさせる言葉に。
ーー一体、何を言おうとしているんだろうか。
と、絶句し、全身を真っ赤かにして身を竦めていたところに。
「だから、こっちの暮らしに慣れるまでは、菜々子の身体に負担をかけるようなことは控えようと思ってるから安心してほしい」
またまた意外な言葉が出てきたものだから私は呆気にとられてしまっている。
まさかそこまで大事にしようと思ってくれているなんて思ってもみなかったからだ。
勿論、身勝手すぎるって自分でも盛大にツッコミを入れてしまいたいくらいに、これ以上にないくらい残念に思ってしまってもいる。