拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
予想以上だったシフォンケーキの出来に、すっかり元気を取り戻していた私は、夕飯を作り終えて、後は桜小路さんの帰宅を待つばかりだった。
部屋は勿論、浴室の掃除だってちゃんと済ませてある。
ふとあることを思いついて、カットしてあった試作品をラッピングしていると、インターホンの軽快な音色が響き渡った。
なんとかラッピングを済ませ、インターホンに対応するより先に玄関ホールへと向かい。
「お帰りなさい、お疲れ様でしたッ。運転手さんってまだ居ますよね?」
「……あっ、あぁ、たぶんな」
「おい、チビッ! どうした?」
「じゃぁっ、ちょっと行ってきますッ!」
「――て、おいっ!」
「おい、こら、チビッ! 創様が帰宅されたというのにどこへ行く気だッ!」
桜小路さんと菱沼さんを迎え入れると同時に、エレベーターへと駆けだしていた。
――早く行かなきゃ、帰っちゃう!
そんな思いに駆られていたため、周囲なんて全く見えてなどいなかったのだ。