拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。


 ……といっても、事故で負傷しているらしい身体のあちこちが痛いため、実際には抱えることなんてできないのだけれど。

 そんな時だった。
 
 コンコンと病室の扉をノックする音が聞こえてきて、私が答えようとした時には、既に扉が開け放たれていた。

 それは別に構わないんだけど。

 ただ、入ってきた人物にちょっと問題があった。

 正確には、身体が痛くて起き上がることができないでいる私が横になっているベッドまで無言で近づいてきたふたりの男性。

 看護師さんかお医者さんだと思っていたけど、スーツ姿からして、そうでないのは一目瞭然だった。

 ふたりともマスクをしているせいで、表情は読み取れない。

 ひとりは、マスクをしていてもとても整った綺麗な顔立ちをしていると思われる長身の若い男性。

 もうひとりは、その若い男性に仕えるようにして傍に控えて立っている。

 その男性の目つきはとても冷ややかで、鋭利なナイフのように鋭い。

 そして何故か、手には体長三〇センチほどの亀が入った水槽を大事そうに抱えている。

 なにより、その男性の顔色が頗る悪く蒼白い。

ーーも、もしかしてこの人たちって、死神?

 私、自分では気づいていないだけで、やっぱり死んじゃったのかな?

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