拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。
泣きっ面にお姫様抱っこ!?
「ギャッ!?」
【菜々子ちゃん、危ないッ!?】
ソファからは落ちずには済んだけれど、足を滑らせてしまったことに焦ってしまった私はビクッと飛び上がって大きな声を放っていた。
どうやらその瞬間を見ていたらしい愛梨さんが私の声に過剰に反応し、叫んだ声に、
ーー落ちるッ!?
そう思い込んでしまった私は、ギュッと瞼を閉ざしたまま、落ちたときの衝撃に備えていた。
けれど当然落ちることはなく、私の身体は、
「お前は本当に騒がしいヤツだな」
呆れたようにそう零してきた桜小路さんによって抱き留められていて。
【キャー、創ったら王子様みたいだわぁ】
愛梨さんのこの黄色い声にハッとし止まってた思考が動き始めた。その結果。
ーーな、何事!?
桜小路さんの声の近さと身体が浮遊する感覚に目を見開いた先に、眩いくらいのイケメンフェイスを捉えてしまい、私はカッチーンと凍り付いたように固まってしまうのだった。
その様子に桜小路さんは、フンッと鼻を鳴らして、
「これくらいのことで真っ赤になってフリーズしてしまうようじゃ、先が思いやられるな」
そう言った後、まあいい、それもいい暇つぶしになりそうだ、となにやらぶつくさと呟いてしたようだったけれど、非常事態に追い込まれた私にはその声を拾うような余裕などなかった。