蜜甘同居 こじらせ中 ゾルック 二人目



 何もやりたくない。

 ご飯もいらない。

 誰とも、関わりたくない。




 まだ3歳なのに
 『苦しみ』の沼から抜け出せなくて。

 部屋に閉じこもって、
 泣くことしかできなかった俺。




 そんな時、母さんのメイドが、
 布団から出られない俺の隣に
 赤ちゃんを寝かせた。




 それが『雪那』


 


 手足がぷにゅぷにゅで。
 
 俺がなでると、微笑んでくれて。

 天使みたいに可愛くて。



 雪那の笑顔が、
 精神安定剤みたいに
 俺の心を楽にしてくれた。
 

 

 それからの俺は、
 心が壊れるたびに雪那を抱きしめ。



 いつの間にか
 雪那を抱きしめないと寝られなくなり。


 俺が中1、雪那が小4まで
 毎晩雪那を抱きしめて眠っていた。





 雪那への想いが
 『スキ』という感情と気づいてからは、
 一緒に眠ることはやめたけれど。




 毎晩、夜の10時。




 雪那の部屋で。

 後ろから思いっきり雪那を抱きしめ。
 
 雪那と、たわいのない会話をする。




 5分だけ。
 たったそれだけの短い時間。




 でも俺にとっては
 誰にも邪魔されたくない、
 贅沢な幸せを感じられる5分間。

 

 
 それも、もう過去の話しかぁ。



 俺は家を出たわけだし。


 今夜からは
 雪那を抱きしめることもできないんだから。

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