蜜甘同居 こじらせ中 ゾルック 二人目
天音君の瞳は
相変わらず重い前髪で隠れている。
サラサラの後ろ髪も、
天音君の魅力を隠すように
やる気なさげに束ねられている。
でも、家では変貌するんです。
前髪を耳にかけ、長い髪をほどいて
お屋敷の中でくつろぐ天音君は
まるで童話に出てくる王子様。
女の子と見間違うほどだから、
ドレスを着せれば
お姫様にも見えると思う。
その中性的な魅力に千柳様が惚れて、
天音君をゾルックに入れようと
悪戦苦闘するほど。
「天音君、今からレッスン?」
大きく頷いた天音君の口が
迷惑そうな声を漏らした。
「千柳さんも、早く諦めてくれないかな?
僕がアイドルになること」
「千柳様は、欲しいものは何が何でも
手に入れるタイプだから。厳しいかな~」
天音君と一緒に暮らし始めて
数か月。
瞳が見えなくても、
口元を観察していれば
天音君の感情がわかるようになってきた。