蜜甘同居 こじらせ中 ゾルック 二人目
「僕ね、せっちゃんが心配なの」
「え?」
「この前だって
『どっちのハンカチが欲しい』って
僕が聞いても、
せっちゃんは答えられなかったでしょ?」
「でも、ちゃんと選んだよ」
「決めた理由を聞いて、
僕、ドン引きしてたんだけど。
気づかなかった?」
「え?」
「『千柳様なら、こっちの方が好きかも』
って言ったよね?」
確かに……言ったけど……
「千柳さん、お屋敷を出て行くんでしょ?
これを期に、せっちゃんも
自分を見つめ直した方が良いと思うよ」
天音君の声は、冷たくて。
前髪で隠れた瞳は、
きっと軽蔑色に染まっている。
心が苦しくなって
堪えるように唇を噛みしめた時
優しさしか感じない
天音君の慌て声が降ってきた。