社畜OL、取引先の社長の恋人に転職しました
ヘッドハンティング
社畜OLは笑えない
「お前は何年働いているんだ!?」
「すみません……」
「すみませんで済んだら、俺はこんなに怒ってはいない!」
今日も今日とて、上司からの罵詈雑言のオンパレードを浴びている私は南澤 カレン。
一応補足すると、この罵詈雑言の元凶は私ではなくこの上司にある。
作った資料に致命的な抜けがあったとか無かったとかで上層部では騒ぎになっているようだが、この資料元々はこの喚いている上司が受け持っていた案件で、自分のミスをこうして私になすりつけようとしている。
こちらも『否』と唱えようとすればできるけど、そうすればこの上司の罵詈雑言は続くだろうし、私の精神ももっと摩耗することになってしまう。
簡単に言えば、逆らうのが面倒臭かった。
上司部下、同僚たちのヒソヒソ声が聞こえてきて、視線もまるで身体中に弓から射られた矢のように突き刺さる。
早く終わらないかなぁ、と思いながらやり過ごすしか無かった。
上司も反応が鈍い私に何を言っても無駄だと思ったのか、30分後には開放された。
どうして、こうなってしまったんだろう。
人付き合いは上手い方だとは思っていたし実際、学生時代友達はまあまあ多い方だった。
デスクに置いてあったチョコレートを一口食べ、目を閉じながらヒビが入ってしまった心の破片をひとつひとつ拾い上げる。
もう心なのかも分からないヒビが入ったそれを、無理矢理接着剤で繋ぎ合わせる。
『まだ大丈夫 』
『大丈夫』
そう言い聞かせながら、軋むその音を聞きたくなくて耳を塞ぎながら、私は歪な心を修復した。