ぬくもり
体をよじろうとすると、後ろから二本の腕がわたしを包み込むように回されているのに気がつく。
腕…、腕がある。
ゆっくり、体を回転させた。
「……っ」
優しげな寝顔がすぐ近くにあり、
少し驚いて声を漏らしそうになる。
穏やかに寝息を立てるこの人は
わたしの恋人、詩(うた)くん。
起きぬけの頭を頑張って働かせ
いつ寝てしまったのかを思い出す。
──そうだ。
詩くんの家に遊びに来て、何かがきっかけでケンカしちゃったんだっけ。
それでいじけたわたしは、勝手に詩くんのベッドに潜り込んで、そのまま寝てしまったんだ。