花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
無情にも月曜日はやってくる。朝からつとめて明るく。まぁそんなこと、意識しなくても友人の顔を見れば刷り込まれたように自然と笑顔が出てくるから特に気を張ることはない。
「はよー葵。テスト終わったのに勉強してんのかよ。真面目か」
「今日の1限数学課題提出だけど、まさか栗原くん終わらせてきたの!?……えらーい! やっぱりイケメンは違うね!!」
「はっ!? 課題あったの? マジ? 嘘だろおい」
「誰が嘘つくかバーカ」
「マジか。しゃーねーなー、土曜の試合全勝したからそれで許してもらうわ」
「なに呆けたこと言ってんだよ。許してもらえるわけねーだろ」
かくいう俺もついさっき課題の存在を思い出して大急ぎでやっている最中。金曜に気付いたんだけど、土日は両方何もする気が起きなくて無益な休日にしてしまった。
今日、朝かなり早くに教室に着いたけれど、みんな相変わらず騒がしくて安心した。世界はいつものんきに、素知らぬ顔をして回っている。
「まぁ何とか言い訳すりゃ見逃してくれるだろ。あとは泣き落とし」
「高校生180センチの男が泣き落としとかキモいだけだわ」
「かわいい女子ならいいのかよ」
「まだ確率は上がるかもしんねーな」
「そっちの方がキモいだろ。女子の泣き落としで鼻の下伸ばすようなクソキモ教師、このオレが追放してやる」
袖を捲って肩をブンブン振り回す。その元気を使って課題でもやったらどうかと思うけれど、その気は一切ないみたいだ。ある意味男らしい。
「終わった」
ホームルームが始まるチャイムと共に、手元では明快な答えが出てきた。
よって、仮定と矛盾するため、もと命題は偽である。
急いで右下に証明終了の印をつけて、プリントを机の中にしまった。