花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 「栗原くん、災難だったね」

 「やっぱり西もそう思う? マジ酷いよな」

 「いいから手うごかせよ」


 結果から言うと、数学の時間、栗ちゃんは惨敗した。栗ちゃんと先生の押し問答はなかなかおもしろかったけれど。


 『おい栗原、課題は?』

 『先生、オレ、土曜日のバスケの試合全勝しました』

 『だからなんだっていうんだよ』

 『前の日から自主練して、次の日はクールダウン。課題をする暇がなかったんです』

 『つまり何が言いたい』

 『課題を提出できません』

 『おれが許すと思ったのか?』

 『先生優しいし……この間だって、体調悪い生徒に優しく声かけてらしたの知ってます。次から絶対に出します。誓います』

 『栗原……』

 『先生……』

 『よしわかった。お前は頭の調子が少しばかり悪いそうだから追加で課題を出してやろう。優しい先生からの正当な土産だ』


 そうして、今に至るわけだ。

 クラスみんなは先生に課題を提出したのに、栗ちゃんだけ先生から3枚のプリントを渡されていた。あの時の栗ちゃんの絶望っぷりったらなかった。確実に上半期ベスト3に入るくらい面白い顔だった。

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