花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
視界の下方で、小さな塊。
見覚えのあるブラウン、大きなウェーブはいつもと何ひとつ変わらない。
華奢な体を丸めて、膝を抱えて座っている。
「あっ、葵くん……」
声をかけられたけれど、目も合わさず下駄箱へ向かう。
後ろから俺を呼ぶ声がする。
何度も何度も。
ただ、振り向くことなく前を進む。
今彼女と話したら、絶対に八つ当たりをしてしまう。
彼女の呼びかけに応えないことで傷つけてしまうのは確実だけれど、彼女と関わって直接俺の言葉で傷つけてしまう方が何倍も嫌だった。
ごめん、俺の勝手でたくさん傷つけてしまって。
また視界が涙で滲む。もう涙は全て出し切ったと思っていたのに、じわじわと滲んでくる。こぼさないように、少し上を向きながら懸命に歩き続ける。
ごめんね、俺を引き留めてくれようとしたのに。