花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 「俺、昨日さ、」


 この騒がしさに任せて言ってしまおうかと思ったのだ。昨日見た西さんのことが頭から離れなくて、正直、これまでの授業内容なんて頭に入ってこなかった。


 ──キンコンカンコン、キンコンカンコン。


 授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。うちの学校のチャイムは少し特殊で、通常の2倍速以上のものが2度流れるだけなのだ。


 「ごめん、あとで聞くわ」

 「おう」


 あとで、言う気になれるだろうか。さっきのチャイムで完全に勢いというものをなくしてしまった。第一、昨日見た西さんが幽霊だったという可能性だってありえる。


 今日、もう一度保健室に行ってみるか。


 現代文の授業は上の空で、俺は下の階の保健室に思いを馳せていた。

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