花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
オシロイバナ:恋を疑う
関係がある話なのかどうかはわからないけれど。
昨日から教室の真後ろ、ど真ん中の席が空いている。
ほんとうに関係のある話かどうかはわからないんだけれど、俺が西さんの呼びかけに答えなかったのがおとといだ。まさか彼女に限ってそんなことで学校を休むなんてことはしないと思うけれど、心配になる。
先生も、西さんは体調が悪いため欠席ですというだけで、それ以上詳しい情報は何もくれない。みんなも気にはなっているけれど……、といった感じだ。
「なぁ、なんも知らねぇの?」
「知らないから困ってるんだよ……」
朝のホームルームが終わって1限の準備をしているときに、栗ちゃんがそう尋ねてきた。あの翌日、つまりは昨日、栗ちゃんにはきちんと謝った。
完全に俺が悪かった、ほんとにごめんというと、栗ちゃんは「謝る相手間違ってるぜ」と俺の頭をかき混ぜたのだ。
『お前のことだから、またひとりでなんか抱え込んでるだろうよ。オレは深く首突っ込んだり余計な詮索したりはしねぇけど、西にはちゃんと伝えといた方がいいんじゃねぇの? お前らなんのために付き合ってんだよ』
正論すぎて何も言い返せなかった。
友だちとは違う、俺たちは友だちの枠を飛び出して恋人になったんだ。
なのに、あれはあんまりだった。
自分のことに必死になりすぎて、西さんの気持ちをきちんと考えられなかった。
謝りたいのに、彼女は教室にいない。
保健室にいるかなと思って昨日覗きに行ったけど、いなかった。先生に訊いてみても『西さんは学校に来てないみたいよ』というだけで、それっきり。