花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く



 「あれ、今日も西さんいないの?」

 「いねぇな。ガッコ休みなんじゃね?」

 「そっか」


 今日は1限が体育だ。朝のうちに体操服に着替えておく。教室は男子の着替える場所となっているけれど、女子はそんなことお構いなしにズカズカ入ってくる。

 まぁ別にいいんだけどさ。

 俺が着替え終わったのと栗ちゃんが着替え終わったのがほとんど同時だった。栗ちゃん、俺が学校に来るまで着替えるの待っててくれたんだって。優しいよね。


 「畔塚さんも違う人と話してるみたいだぜ。なんか、前に戻ったみたいじゃね?」


 栗ちゃんの言う通り、教室の様子と人間関係は驚異の修復力を見せた。西さんという存在がいなくなった今、彼女はもとからいなかったもののようにみんな振舞っているし、誰も心配しているようなそぶりは見せない。


 「ちょっと、寂しいけど」

 「ま、そんなもんかもな。たぶん誰がいなくなったって同じだよ」


 誰がいなくなったって、それを仕方のないことだとして受け止めるしかない。いないものに固執し続けるのは、つらいから。


 「とりあえず今日のバスケ絶対勝つぞ」

 「俺また突き指すんの嫌なんだけど」

 「知らねぇよ。ちゃんと指広げてろ」


 脱いだ制服をきちんと畳んで、リュックの中にしまい込む。

 教室は少しだけ浮かれた空気に包まれていた。

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