花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 「葵―――! こっちパス!」

 「はいよっ!!」


 コートを縦横無尽に駆けまわる。他の男子より少しばかり華奢だから機動力は抜群だ。生まれ持ったすばしっこさも加えて、コートの中は俺の独壇場となっていた。

 栗ちゃんも同じチーム。負けるはずないじゃん?


 「葵っ!」

 「っと、もうちょっと加減しろってのっ!」


 栗ちゃんがコートの一番端から放ったパスをゴール下付近で受け取る。半端じゃないスピードと回転を維持したまま飛んできたボールに怯みそうになったけれど、あれをまともに食らってしまえば確実に骨が一本は逝っていただろう。最初に言われた通りきちんと指を広げてパスを受け取る。
そのままリングに向かって投げれば、それはスポっと軽い音をたてて俺たちに点を運んできてくれた。


 「ナイッシュー! このままいくぜ!」


 経験者、というか現役エースが張り切っているせいで相手チームの奴らはほとんど戦意を喪失してしまっている。なんかすごく申し訳ない。

 けれど、これでも栗ちゃんはすでに手加減をしているのだ。普段の栗ちゃんのバスケを見たことがある人はわかるはずだ。部活で真面目にバスケをするとき、栗ちゃんは自らガンガンボールを奪いに行って、相手をうまく威圧しながら大量の点数を狙いに行く。


 それに比べて今は……。
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